アクロージュファニチャー
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ブラックウォールナット総無垢の
スピーカー一体型オーディオボード

インテリアとしても美しいスピーカー一体型オーディオボード

皆さんご存知のように、時間や国境を越え、多くの楽器は木で作られています。それも無垢材という木の塊から削り出したり、そのパーツを組み上げているものがほとんどです。
バイオリン、ギター、琴、リコーダー、クラリネット、和太鼓、拍子木、マラカス、マリンバなどなど。木が持つ固有の音色や響きを、人が心地良いと感じることが多いからです。

音を鳴らすということでは、スピーカーやオーディオも同じです。無垢の木である方が素晴らしい音色や響きとなる可能性を大きく秘めています。ですが、実は無垢材で作られたスピーカーは世の中にほとんどありません。国内・海外を問わず、メーカーが無垢材を使用してスピーカーを制作しないからです。合板や木質素材をいう無垢材でない素材を使用しています。
それは決して無垢を使うと、音が悪くなるからではありません。良くなることは分かっているのですが、無垢の木という個体差が大きい自然物をコントロールし、商品として音を均一に作り上げることが非常に難しいからです。無垢のスピーカーはもはや楽器であり、職人の技量やこだわりに大きく左右される領域なのだと思います。

今回、本気で無垢のスピーカーに挑戦しました。

制作に当たって、オーディオ総合月刊誌『ステレオ』の編集長・吉野俊介氏にアドバイスいただきました。吉野氏は編集という仕事柄、世界中のオーディオを聴き、日本中のオーディオファンの音を聴き、誌面の中で様々な実験をしています。耳の良さや知識が半端ではありません。

制作に当たって、テーマとしたのは主にこの3点。

  1. ブラックウォールナット総無垢で作り上げるスピーカー※『ステレオ』2017年8月号内で私も参加し行いました「無垢材の聴き比べ」でブラックウォールナットが最も印象的な音や響きでありました。
  2. スピーカーユニットはフルレンジ※「スピーカーはフルレンジに始まりフルレンジに終わる」と言ったりします。フルレンジとは全ての音をひとつのユニット(振動盤)で出すスピーカーのことです。全ての音源をひとつで鳴らすことが難しい反面、左右それぞれ一箇所から全ての音が出てくる自然な聴こえ方が魅力であり、最もシンプルで潔いスピーカーと言えます。
  3. インテリアとしても美しいもの※「ここから音が出ています!」を強調し過ぎない、聴くだけでなく見ていても心地良いシンプルなオーディオセットを目指します。

こうして2017年10月、オリジナルのスピーカーを制作しました。多くのこだわりを込めました。多岐に渡りますので整理して。

デザイナーとしてのこだわり

  1. 自宅マンションの小さなリビングで使用することを想定。低いソファーに座り聴き、スピーカーまでの距離は2m程しかありません。その狭い空間で、小さな音でも響きや奥行きが感じられるよう考えました。
    独自設計したホーン式バスレフ構造。低音スリットを両サイド外向けに配し、低音は部屋を包み込むように音を出します。一方、オーディオボード前面を内丸の曲線にし、中高音は耳にストレートに届くよう少し内向きに配しました。
  2. ユニットの位置を耳の高さ程度に、視聴位置との関係は音が良いとされる正三角形に近くなるよう、左右のユニットの距離を決めました。
  3. 左右のスピーカーと中央のオーディオラックとが、一体感あるデザインにしながらも、音が濁らないようセパレートとしました。
  4. 脚はスタンド脚とし、音がこもらないようにしつつも、無垢の木がより響き渡るよう浮かせるデザインとしました。

家具職人としてのこだわり

  1. 適材と考えられる直径50㎝の1本のブラックウォールナットの丸太から制作しています。樹種によって、音や響きに違いがあることは試聴テストで分かりましたが、ブラックウォールナットなら同じ音になる訳でもありませんでした。木目や比重で音が変わります。
    目的の音を出すであろう1本の丸太からスピーカーだけでなくオーディオラックを含めた全てのパーツを制作しました。
  2. 同じ丸太を使用しながらも、さらに左右の木目が同じになるよう、全てを対称に配しています。見た目の美しさもありますが、そこまですることで左右の音が同じになるはずです。
  3. 無垢の木はこうした板となった後でも毎年伸縮を繰り返します。その伸縮分を計算し構造を決めています。また、使用する場所に適した含水量の材を使わないと、使用後に反ったり、ねじれたり、隙間が空いたりと不具合が生じます。そうした不具合は余計な振動につながり、音に悪影響を与えます。適材を用意することがとても重要です。
  4. 無垢のスピーカーは、逸品の木製品となるエンクロージャーでなくてはなりません。メーカーが制作することが難しい数々の理由があります。
  5. ユニットが取り付けられるスピーカー前板にはブラックウォールナット縮み杢という銘木を使用しました。揺らぎを感じる木目で音にも良い影響がありますが、真空管アンプの光やろうそくの炎のように、視覚的な揺らぎ効果も期待できます。

音作りのためのこだわり

  1. 内部構造
    内部は球状に近い構造になっており、更に細かな凹凸を付けてあります。音が内部で一部に集中することをなくし、なるべくきれいに乱反射させています。
  2. 吸音材の素材や量の調整
    様々な素材・量で試聴した結果、天然素材であるオーガニックコットンをほんの少しだけ現在入れています。
  3. 変則バスレフでの周波数調整
    いくつかの周波数域で試聴した結果、30~40Hzくらいで設定しています。
  4. インシュレーター
    金属、革、黒檀などを試してきた結果、インシュレーターを付けず、純粋にブラックウォールナット無垢のスタンド脚だけにしています。
  5. ユニットを付けるネジやクッション材
    ネジは太く長いものを使い、余分な音の原因となる金物を極力使わずに取り付けています。
    ユニットの裏には柔らかい薄手の本革を全面に貼り、余分な振動をなくすようにしています。

採用したスピーカーユニットとアンプのこだわり

  1. スピーカーユニットはノルウェーSeas社製 FA22RCZ、20㎝フルレンジ。
    コンディションによって音の差が出ないよう、現行品の中から最大サイズのフルレンジを採用しました。Seas社はヨーロッパの有名スピーカーメーカーにユニットを提供する影の実力者です。
  2. アンプはプリメインアンプとし、これも最もシンプルで加飾のない音を目指し、純A級のLuxman L-550AXを現在接続しています。

今、私の中ではかなり良い音になってきたと思っています。聴いていて楽しいし、いつまでも聴いていたくなる音です。アドバイスしてくださった吉野氏も「音楽として正しい楽しい音です」と言ってくれます。

気になる周波数レンジですが、無垢の木とユニットの力で、フルレンジとは思えない高音の伸びがあります。低音も変則バスレフのお陰か、周波数テストでもしっかり出ていることが確認されています。そしてダイナミックレンジはアンプの力も借りて、かなりしっかり感じられます。
そうしたことよりも、この総無垢のスピーカー。まず響きが圧倒的に違います。音の芯にもブレがありません。それによって音の奥行き感も違います。ひとつひとつの音がしっかりクリアに聴こえ、長い余韻がとても心地良いのです。癖になる響きです。
バイオリンや拍子木がもし合板でできていたらどうでしょうか。音楽をこよなく愛している皆様ならご想像いただけると思います。つまり無垢のスピーカーは、これまでのスピーカーとは違う次元のスピーカーなのです。今までにない音なのかも知れません。

もしかするとオーディオの専門家からは「正しくない」と言われるかも知れません。もっともっと進化する余地があるのかも知れません。それでもこのオーディオは、無垢のフルレンジのスピーカーオーディオとして、これまでになかった素晴らしい音を奏でていると思います。

今も無垢の木ならではのエイジングによって、音は良くなり続けていきます。ぜひ、ここに来て聴いてみてください!

もっと素晴らしいユニットを使用し、エンクロージャーもさらに計算し、総無垢スピーカーを作ったらどう聴こえるのでしょうか。「誰か名乗りを上げてくれないものか」次の挑戦を夢みています。

追憶 6年ほど前TANNOY Autographのオーダーを受け、制作したことがありました。その日から、「いつか自分自身のためにスピーカーを作ってみたい」と想うようになりました。今回、初めての自作スピーカーの制作にもかかわらず、ここまでの完成度にすることができたのは、吉野俊介氏の協力があってのことでした。ありがとうございます!

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